
スキニフィケーションって何?髪をスキンケア基準で考える前に知っておきたいことを毛髪診断士が解説
美容雑誌やコスメメディアで、この秋よく見かける言葉があります。「スキニフィケーション」。髪や頭皮のケアを、スキンケアと同じ基準で考えようという流れのことです。ヘアケアの新作紹介でも、頭皮用美容液やマイクロバイオーム(常在菌)に着目した製品が並ぶようになりました。
流行りの言葉として流すこともできますが、毛髪科学の立場から見ると、この発想にはかなり筋が通っています。一方で、そのまま真に受けると損をする部分もあります。この記事では、スキンケアの考え方のうち頭皮に持ち込むべきものと、持ち込まないほうがいいものを分けて整理します。
この記事の結論
- 頭皮を肌として扱う発想は正しい。頭皮は顔と1枚につながった皮膚だから。
- 鍵は「自覚のない炎症」。頭皮に赤みがある人ほど、薄毛になりやすく白髪も多いという調査がある。
- ただし顔用の化粧品をそのまま頭皮に使うのは別の話。皮脂腺の数も毛穴の数も違う。
- 高い美容液を足すより、刺激を減らすほうが先。順番を間違えないこと。
スキニフィケーションとは何か
直訳すると「肌化」です。これまで『洗って、流して、乾かす』で完結していたヘアケアを、スキンケアと同じ解像度で考え直そうという考え方を指します。具体的には、頭皮を「洗う場所」ではなく「育てる場所」として扱い、バリア機能・常在菌バランス・炎症・酸化といった、顔のスキンケアで使われてきた概念を持ち込みます。
背景には、頭皮用の美容液やエッセンスが増えたこと、頭皮の常在菌に着目した製品が出てきたことがあります。市場の動きが先行している面はありますが、発想そのものは理にかなっています。理由を次に書きます。
なぜ理にかなっているのか——頭皮は顔の皮膚の続きだから
頭皮と顔は、途中で切れているわけではなく、1枚の皮膚としてつながっています。構造も基本的に同じです。ですから顔に起きることは、頭皮にも起きます。
伊藤廉『大人髪のトリセツ』(KADOKAWA)で紹介されている大規模調査には、はっきりしたデータがあります。健康な頭皮はもともと青白い色をしています。ところが30代になると分け目を中心に赤みが点在し始め、40代では赤みの範囲が広がり、さらに黄色くくすんでいく。この黄ぐすみはタンパク質の酸化によるものだと説明されています。
そして、この調査でいちばん重要なのはここです。
頭皮に赤みがある人ほど、薄毛になりやすく、白髪の本数も多いという傾向が見られた——と報告されています。
赤みの正体は「自覚のない炎症」
なぜ赤いと白髪や薄毛につながるのか。この赤みの正体が炎症だからです。
炎症というと、ケガの腫れや日焼けの赤みのような、痛みを伴うものを思い浮かべます。しかし体の中では自覚症状のない弱い炎症も起きています。顔の肌で言えば、日焼けするほどではない弱い日差しを浴びたときにも、肌の内部では微弱な炎症が起きていて、それが積み重なってシミやシワにつながっていく。同じことが頭皮でも起きていて、頭皮の場合は毛根の細胞が攻撃されます。
つまりスキンケアが長年やってきた「炎症を起こさない・酸化させない・バリアを守る」という発想は、頭皮にこそ必要だったということになります。これがスキニフィケーションの正しい中身です。
持ち込んでいいもの、持ち込まないほうがいいもの
持ち込んでいい:炎症を増やさないという発想
スキンケアでは「洗いすぎない」「こすらない」が基本になって久しいですが、ヘアケアはいまだに『しっかり落とす』が主流です。ベタつきが気になると洗浄力の強いシャンプーに替え、フケが出るとさらに強く洗う。これは顔で言えば、乾燥しているのにクレンジングを強くするのと同じことです。実際、白髪染めのあとフケが増えたときに洗浄力を上げてはいけない理由は、まさにこれです。
持ち込んでいい:続けることを前提に組む
スキンケアは毎日続けるものとして設計されています。ヘアケアも同じで、月1回の特別なケアより、毎日の刺激を減らすほうが効きます。頭皮の変化は30代から始まるので、気になってから始めるのでは遅いという点も、肌の考え方と共通しています。
持ち込まないほうがいい:顔用の化粧品をそのまま頭皮に塗ること
ここは注意が必要です。頭皮は顔と構造が同じでも、条件がかなり違います。皮脂腺の密度が高く、毛穴の数も桁違いに多い。顔用の保湿クリームのような油分の多いものを頭皮に塗ると、毛穴に残って酸化し、かえって刺激のもとになります。頭皮用として作られたものを使ってください。
持ち込まないほうがいい:高価なものを足せば良くなるという発想
正直に書きます。頭皮用美容液を足すより、いま与えている刺激を減らすほうが、変化は早く出ます。強すぎるシャンプー、熱すぎるお湯、濡れたまま寝る習慣、同じ分け目による紫外線の集中。これらを止めるのは無料です。足す前に、引く。順番を逆にすると、効果が分かりにくくなります。
今日から試せる、頭皮のスキニフィケーション4つ
①自分の頭皮の色を見る。スマートフォンで分け目を接写してください。青白ければ良好、赤みが点在していれば炎症のサイン、黄色くくすんでいれば酸化が進んでいます。これが一番確実な現状把握です。
②お湯の温度を38℃に下げる。熱いお湯は必要な皮脂まで奪います。顔を熱湯で洗わないのと同じ理屈です。
③分け目を数センチずらす。同じ位置で分け続けると、その一本の線にだけ紫外線が集中します。赤みが分け目から始まるのはこのためです。
④乾かすまでの時間を短くする。濡れている時間が長いほど、頭皮の常在菌バランスが崩れやすくなります。
サロンでできること・できないこと
正直にお伝えすると、サロンで頭皮の炎症を治すことはできません。明らかな赤み・かゆみ・湿疹がある場合は皮膚科の領域です。
当店でできるのは、マイクロスコープで頭皮の色と毛穴の状態を実際にお見せして、いま炎症の段階なのか酸化の段階なのかを一緒に確認すること、そして毛穴の皮脂をリセットして刺激の少ない状態に整えることまでです。頭皮ケアコースはこの考え方で組み立てています。どのメニューが合うか分からない場合はおまかせ処方コースでご相談ください。メニュー全体は悩みから選べる一覧からご覧いただけます。
まとめ
スキニフィケーションは、言葉こそ新しいものの、中身は「頭皮も肌として扱う」という当たり前の話です。そしてそれを裏づけるデータもあります。頭皮の赤みは自覚のない炎症で、赤みがある人ほど薄毛・白髪が多い傾向が報告されています。
ただし、顔の化粧品をそのまま使うことではありませんし、高いものを足すことでもありません。まず自分の頭皮の色を見て、刺激を減らす。そこからです。
よくあるご質問
Q. スキニフィケーションとは何ですか?
A. 髪や頭皮のケアを、スキンケアと同じ基準で考えようという流れのことです。頭皮を「洗う場所」ではなく「育てる場所」として扱い、バリア機能・常在菌バランス・炎症・酸化といった肌の概念を持ち込みます。頭皮は顔と1枚につながった皮膚なので、発想としては理にかなっています。
Q. 顔用の化粧水や美容液を頭皮に使ってもいいですか?
A. おすすめできません。頭皮は顔と構造は同じでも、皮脂腺の密度が高く毛穴の数も桁違いに多いためです。油分の多いものは毛穴に残って酸化し、かえって刺激のもとになります。頭皮用として作られたものを選んでください。
Q. 頭皮の赤みは自分で確かめられますか?
A. できます。スマートフォンで分け目を接写してみてください。健康な頭皮は青白く、赤みが点在していれば炎症のサイン、黄色くくすんでいれば酸化が進んだ状態です。赤みは30代から分け目を中心に出始めるとされています。
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